前回は中南米では「ドル化」が決して異例の政策とは言えず、インフレ抑制のための劇薬として何らかの形でドルに自国通貨を連動させる政策が取られた例があることを指摘した。今回は、中央銀行とは何かということを改めて考えてみたい。

教科書的に言うと、中央銀行の役割は、①決済システムの運営、②危機の際の「最後の貸し手」、③金利のコントロールによる物価安定の維持、の3つである。日銀は、①日本銀行券(お札)や金融機関の決済手段(日銀ネット)を提供し、②金融システムの安定が揺らぎそうな時には緊急貸出を行い、③「賃金上昇を伴う物価安定の目標(2%)の持続的・安定的な実現」を目指した金融政策を行なっている。つまり、日本では中央銀行がフルセットの活動を行なっている。

しかし、世界の全ての国が日銀と同様な役割を果たせているわけではない。「国際金融のトリレンマ」という議論がある。これは、①為替相場の安定、②金融政策の独立性、③自由な資本移動、の全てを同時に達成することはできない、というものだ。このため、各国はそれぞれの条件に基づき、二つを選んで一つをあきらめることになる。

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