シンガポールのディーリングルームで、欧州時間が始まる前の静かな数分間。
ブローカーのヘッドラインには、中東の緊張拡大、イスラエルとヒズボラ、そしてイラン体制の不確実性が並ぶ。
価格はまだ崩れていない。
VIXはパニック水準ではない。
原油も制御不能な暴騰には至っていない。
クレジットスプレッドも秩序を保っている。

だが我々は、ポジションを軽くしている。
それは恐怖ではない。
価格が秩序を保っている今しか、秩序は利用できないからだ。
問題は“方向”ではなく“分布”、市場は常に確率で動く。
しかし今回の問題は、確率の推定そのものが難しいことだ。
→ 体制移行が絡む
→ 宗教的正統性が揺らぐ
→ 革命防衛隊という軍事経済複合体が統治の柱
→ ホルムズ海峡という物理的ボトルネック
これは通常の地政学イベントとは異なる。

ヒストリカルデータがほとんど意味を持たない。
我々が恐れているのは「下がるかどうか」ではない。
テールリスクが定義できないことだ。
