私は英国人だが、数年前までソウルに赴任し、現在は東京で暮らしている。
この二つの国で生活する中で、しばしば耳にしたのが「どちらがどちらの祖先なのか」という歴史を巡る熱い議論だ。
ソウルでは、「日本人の祖先は朝鮮半島から渡った人々だ」という説明をよく聞かされた。
しかし、東京に来てみると、特に歴史に関心を持つ層からは「いや、最近の研究ではそう単純な話ではない」という反論も耳にする。
一体、どちらが真実なのか?
単なるナショナリズムのぶつけ合いに終始させるのは、あまりにも勿体ない。
幸い、私には特定国家への感情的なしがらみはない。
そこで、客観的な考古学や遺伝学の知見に基づき、この東アジアの根深い祖先論争に、一人の異邦人として冷静にメスを入れてみることにした。
この問いに対する答えは、私たちが想像するよりも遥かに複雑で、「どちらか一方が他方の純粋な起源である」という安易な決めつけは、歴史の深遠な物語を鮮やかに裏切るのだ。
誰もいなくなった半島と、海を渡った縄文人
