「争続」。
この物騒な二文字が、人生の終末に待ち受ける財産承継に影を落とすとは、なんとも皮肉な話ではありませんか?
まるで、静かに幕を閉じようとする人生の舞台に、突如として感情の濁流が押し寄せるかのようです。
相続が始まった途端、人が別人格に変貌するとも言われます。
普段は冷静沈着な顔をしている人が、いざ遺産を目の前にすると、心の奥底に眠っていた欲望や不満が牙をむき出す。
それは、本人でさえ制御不能な、激しい感情の奔流なのです。
さらに、この人間ドラマを複雑怪奇なものにするのが、民法という名の羅針盤と、相続税法という名の迷宮です。
複雑に絡み合ったルールは、時に私たちを翻弄し、思わぬ落とし穴へと突き落とします。
制度を知らなかったばかりに、かけがえのない家族の絆が断たれ、二度と修復できない深い亀裂を生んでしまうことも、決して珍しくありません。
現役の税理士として、私はそんな相続の現場で繰り広げられる、生々しい人間模様を目の当たりにしてきました。