ウイスキー造りに数十年携わってきた立場から、ひとつ言わせてほしい。
最近のウイスキーブームを、心から喜べないのだ。
世界に誇るジャパニーズウイスキーが評価されるのは嬉しい。
しかし、その裏で起きている現象。中国や台湾をはじめとする市場での投機的取引、つまり「ウイスキーが投資対象になっている」ことに、強い危機感を抱いている。
ジャパニーズウイスキーは、スコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアンと並ぶ「世界五大ウイスキー」の一角を占めるまでに成長した。
ここに至るまでには、半世紀以上の努力と試行錯誤があった。
だが、今やその歴史と品質が「資産価値」の名のもとに消費されつつある。
ウイスキーは本来、嗜好品として楽しまれるものだ。
熟成による変化を楽しみながら、時間をかけて味わうもののはず。
しかし、今のブームは明らかに違う。