かつて、銀座の鮨屋は特別な場所ではなかった。
戦後から高度経済成長期にかけて、そこは日常の延長線上にある「粋」の場だった。
父に連れられて訪れた鮨屋の賑やかな空気、店主との軽妙なやりとり、隣の席から聞こえる笑い声。
それは、銀座という街が持つ温かさそのものだった。
しかし、今やその面影は薄れ、銀座の鮨屋は「非日常」の象徴となった。
一人10万円を超えるコースも珍しくなく、ミシュランやSNSで話題の名店は、怪しげな富裕層や観光客向けの特別な空間へと変貌した。
気軽に立ち寄れる「粋」はどこへ消えてしまったのだろうか。
銀座の変化と「観光立国」の光と影