過去、10回にわたり「尊厳死、安楽死、リビング・ウィル、そして終末期医療」について寄稿してきた同士である医師は、残念ながら、虹の橋を渡ってしまいました。
長い間、彼の言葉に耳を傾けてくださり、心から感謝申し上げます。
彼の意志を引き継ぎ、寄稿をバトンタッチさせていただきます。
私も彼同様、欧州で20年近く「尊厳死、安楽死、リビング・ウィル、そして終末期医療」に携わってまいりました。
数年前に日本に戻り、同胞とともに地道ながらこれらのテーマについての活動を開始しています。
今後の寄稿が、皆さまに「時には立ち止まって、大切なことを考える」きっかけを与えることができましたら、これほど嬉しいことはありません。
「病気にならない人間はいないし、死なない人間もいない」
この事実を聞くと、避けられない運命を突きつけられたように感じるかもしれません。
しかし、この真実に向き合うことでこそ、私たちはより良い人生の終わり方を選べるのです。
緩和医療医師である私は、日々の診療を通じて「もっと早く知っていれば違った選択ができたのに」と嘆く患者さんやご家族に数多く出会ってきました。
終末期の医療には多くの選択肢があり、その一つ一つが人生の最終章を形作ります。
しかし、残念なことに、医療現場の実態や科学的な事実が一般の人々に正確に伝わることはほとんどありません。
情報が氾濫する現代において、誤解や誤報が独り歩きし、患者さんや家族の選択を大きく左右しているのが現状です。
そこで今回は、「終末期医療」にまつわる代表的な誤解を取り上げ、正しい情報をお伝えします。
ゴールは、“望んだ終わり方”を選ぶために必要な知識を共有することです。