10月27日に総選挙を控えて日本側で新たな材料がないなか、ドル/円は再び149円台で推移しています。

 

現在の米国は景気指標が堅調を示す一方で、インフレの落ち着きによって追加利下げが引き続き予想されています。

 

11月5日の大統領選挙の結果はなお不透明ですが、14日にNYダウとS&P500指数は史上最高値を更新しました。

 

先週、中東と中国の動向に注意が必要だと指摘しました。

 

その結果は、どちらも「米国経済の一人勝ち」という見方を強めるものでした。

 

 

 

中東については、イランの10月1日の弾道ミサイル発射を受け、市場参加者はイスラエルの反応を緊張感とともに見守っていました。

 

 

イランとイスラエルは長年敵対していましたが、昨年までは相互に直接攻撃することはありませんでした。

 

イランはハマスやヒズボラを通じた間接的な攻撃にとどめ、イスラエルはイランの核開発を阻止するために核科学者の暗殺や核施設へのサイバー攻撃を行なっていましたが軍事衝突は避けていました。

 

この構図は、4月にイランがイスラエルへのドローンやミサイルによる攻撃に踏み切ったことで変化しました。

 

 

ただ、イランが事前通告し、しかもイスラエルが防空システムでその大半を迎撃できたため、本格的なエスカレートは回避されました(イスラエルは報復としてイランの防空レーダー施設をミサイル攻撃しました)。

 

しかし、10月1日のイランによる二度目のミサイル攻撃では、極超音速弾道ミサイルも用いられ、イスラエルが防空システムで完全に防御することができませんでした。イスラエルのネタニヤフ首相は報復攻撃を宣言しています。

 

事態を不透明にしているのは、イスラエルで右派が力を強めており、「核を持つイランから全ての西側社会を守る」という主張が出ていることです。

 

 

もしイスラエルがイランの核施設を攻撃した場合、国家間の本格的な戦闘に発展し、原油価格を通じて世界経済にも大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

 

もう一つの問題は、米大統領選挙が間近に迫っていることです。

バイデン大統領はイスラエルに自制を求めていますが、トランプ前大統領はイランの核施設をまず攻撃すべきだと主張しています。

 

 

イスラエルがイランの攻撃から2週間経っても反撃していないことで、市場は安心感を取り戻しています。

それでも、過去にもいわゆる「オクトーバー・サプライズ」が米大統領選挙を左右したことがあり、イスラエルの動向には引き続き注意が必要です。

 

中国では、藍仏安・財務相が10月12日の記者会見で「債務を拡大して財政赤字を増やす余地がある」と表明しましたが、具体的な規模には言及しませんでした。

 

 

実際の決定は10月下旬にも予定される全人代常務委員会まで待たなければならないようです。

 

10月13日に発表された9月の中国の消費者物価(CPI)は前年比+0.4%、食品・エネルギーを除くコアは同+0.1%と低迷しています。

中国経済は不動産バブルの崩壊と過剰供給力により、かつての日本のようなデフレ局面に入りつつあります。

 

中国政府が9月24日に金融緩和・不動産支援・株式市場支援からなる政策パッケージを発表して以降、中国株は上昇に転じ、市場はそれに続く財政刺激策を待ち望んでいました。

 

 

日本の例でも明らかなように、需要不足の対応には財政支出が不可欠であるためです。

 

しかし、国慶節休暇(10月1〜7日)が終わった後も追加対策の発表がなかったことで、外国投資家の中国経済に対する期待感は薄れつつあります。

 

今週は、10月17日のECB理事会が注目です。9月に続く2会合連続の0.25%の利下げで政策金利を3.25%へ引き下げることが広く予想されています。

 

 

欧州ではネガティブなニュースが相次いでいます。

 

ドイツ政府は10月9日に発表した経済見通しで2024年の成長率予測を、4月時点の+0.3%から-0.2%へ下方修正しました。

そうなった場合、2023年の-0.3%に続き2年連続のマイナス成長となります。

 

 

また、格付け機関フィッチは10月11日に財政政策や政治に関するリスクの高まりを理由に、フランスの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げました。

 

 

当面、「米国が世界経済の唯一のエンジン」という状況は続きそうです。