ドル円は24日の東京市場で155円の節目を割り込み、25日08:30時点では、153.75円で取引されている。
その少し前から、「構造的な円安」を指摘していた為替アナリストも発言のトーンを変え始めている。
たとえば、日経新聞は24日の未明に次のような記事を配信していた。
見えたか歴史的円安の底〜金利差見越し売り縮小 「円弱」時代は不変か
この記事は、「構造的な円安要因が解消されたわけではなく、「円弱」の時代は長引くとの見方は変わっていない」としながらも、ヘッジファンドの「日米金利差の縮小をテーマとして投機的な円の買い戻し」や、個人の外国為替証拠金(FX)取引の目線の変化を指摘し、年末に向けて150円程度へ円高が進むという為替アナリストの見方を紹介している。
セレンの寄稿者、Snow White氏が1ヶ月前の6月24日に以下の寄稿を読み返してみて欲しい。
「Vol 489円安のトレンドは続くのか? 7月の転換点の可能性に要注意」
Snow White氏は、その時点で、「円が弱い通貨であることは間違いない」とした上で、市場を動かすのは常に「新しい材料」であるため、日米の金融政策の方向性の変化を受けて「ドル円の流れは変わる可能性があります」と指摘していた。
少し時間差はあったが、概ね予想通りの展開になったと言ってよいだろう。
また、Snow White氏は、日経新聞が「ヘッジファンドなどが金利差を収益源とする円キャリー取引を手がけやすい環境だ」と書いていることに疑義を呈していた。
ヘッジファンドという「最高レベルの投資のプロ」がそんな誰でもできる取引を行なって評価されるだろうか、と。
今回の日経の記事では、「日米金利差の縮小をテーマとして投機的な円の買い戻し」という見方が示されている。
もし本当に”投機”をしているヘッジファンドが「金利差を収益源」とした円キャリートレードを行っていたとするならば、「円の買い戻し」を行うのは、単なる利食いまたは損切りにすぎないのではないか?
何よりも重要なこととして、
来週には重要な日銀決定会合とFOMCを控えている。
日銀の発表が(これまでと同様に)市場の期待を裏切る可能性は十分にある。
また、FRBの利下げが予想されているのは今回でなく9月の会合であり、それまでにまだ時間があることから、何も重要な発表はないかもしれない。
それなのに、なぜヘッジファンドが今から動かなければならないのか?
ヘッジファンドはロジックを確信し、確率が計算できる状況でなければ、巨額の投資を行うことはない。
何よりも、日経新聞の記者はどこから情報を得ているのだろうか?
ヘッジファンドが企業秘密である投資判断を、顧客でもない金融機関やメディアに気安く話すことはない。
当たり前の話である。