前号でご紹介した通り、私は東京のある場所で長年ビアハウスを営むビール注ぎの職人です。
皆さんが口にされる「とりあえずビール」という言葉には、私たちビール職人や関係者にとっては一種の「辛い言葉」が込められています。
これは、ビールが大衆化し、「宴会の最初の一杯」という意味で用いられるようになったためです。
この表現には特定の酒造メーカーやブランド名がなく、ビールが他の酒類よりも低く評価されているように感じられます。
私のビアハウスでは幸いにも「とりあえずビール」という注文は見られませんが、通常の飲食店舗では頻繁に耳にします。
西洋レストランで「とりあえずシャンパン!」や日本料理店で「とりあえず日本酒!」という言葉は聞かれません。
なぜビールだけがこのような扱いを受けるのでしょうか?
近年、増え続ける女性のビールファンによると、宴席で「とりあえずビール」と注文する人は若者の間では「ダサい」と見なされています。
また、お酌文化を未だ受け入れ、女性がビールを注ぐことを期待する男性は「時代遅れ」と思われる人も多いようです。
時代の変化とともに、「最初は○○系のビールをお願いします」という表現が一般的になる日も近いのかもしれません。
では、ビールの地位向上を願いつつ、ビールについてさらに話を深めていきたいと思います。
日本で「麦酒」や「ビール」と呼ばれるようになった経緯は何でしょうか?