ご自身が外国為替への理解に自信がある方は、
読む必要はありません!
少し長めに続いていたドル円相場のゲームが、一旦休戦に入った様である。
米国景気の弱さがこの2ヶ月顕著になったことが1つの大きな要因である。
方向性が顕著になれば、投資妙味が薄れることから、プロ中のプロは、主要通貨ではない日本円への投資を終え、別のゲームに切り替えることは当然である。
美味しい食事を食い尽くし、デザートは,康のため手をつけないのと同じである。
ファンダメンタルズでいうと、このところ突然「円安から円高へ」という報道が続出している。
この1週間で、見事な「掌返し」である。何がそうさせているのか、そして、そこに「審美眼」が存在するのか不思議でならない。
旧知の現役で巨額な自己取引をしているファンドのトレーダーと国際金融のプロ(ストラテジスト・エコノミスト)とに個別にヒアリングをしてみた。
両名は別の金融組織に従事していることから、公平性あるプロの視点であると思われる。
再度申し上げるが、外国為替・国際金融市場に自信がある方は、
読まないでください。
【プロ・トレーダー】
※プロ中のプロ・トレーダーは、記者や他社専門家と接見・取材をすることはない。そして、心中の考察を伝えてくれることもあり得ない。今回は、30年近い友人関係から、プロの世界を語ってくれた。
質問:現在、どの市場の取引をされておられますか?
回答:私は、シンガポール・オフィスでアジア全体の為替トレードをしている。元々はTOP米系投資銀行でトレーダーをしていたが、縁あって、数年前から、現在勤務しているマクロファンドに転籍。
昔は、ドル円中心のトレーダーだったが、今は、アジア通貨であれば、単独で取れるリスク額範囲であれば、自分の判断でどの通貨を取引しても良い。
質問:どの通貨に注目していますか?
回答:先週までは、「米ドル/日本円 と「ドル・インドネシアルピア」。
ドル円は、米ドル・ユーロ程ではないが、それ相当の市場規模。
その市場で、手付かず要素が多く分析ができた。大きくリスクを取りやすかった。
しかし、現在、米ドルの位置付けが変わったことから、一旦利益確定して、当面は、別の通貨に注目する。
米ドルルピアは、自国の経済力に比して、外国人投資家に自由に参入できる市場だが、市場の薄さもあるので、短期勝負が中心。
結果的に、日本円とインドネシアルピアで、非常に儲けさせてもらった。
新しい材料が見つかれば、いつでも試食にいく。アジアでも数通貨ある。いろんな材料がある。
質問:何故そんなに儲けることができたのですか?
回答:(笑)今回は儲かったが、損することも当然ある。
大事なのは、勝率ではなく、利益額。
野球で言えば、打率ではなく打点。
ファンドの哲学と方針によるが、当ファンドは、基本ファンダメンタルズを非常に重視する。
その上で、過去データーをクオンツアナリストが分析して私たちに提供してくれる。
その先に、蠢く市場動向を経験ノウハウで見つめ続け投資時期・ポジションクローズのタイミングを計る。
大雑把に言うと、米ドルの動きが非常に分かりやすかったことと、地政学リスクを余りにも気にする機関投資家が多かったこと。
彼らは、機動的な動きができない。
もう少しだけ言うと、米国経済特有な動きを把握しているエコノミストとストラテジストが当社にいること。
彼らが高額報酬を得ているのは当たり前のことだと痛感した。
質問:投資銀行時代(バイサイド)とファンド(セルサイド)と何が違いますか?
回答:プロ意識と責任、そして報酬度合い。投資銀行時代は多くても1日2回ほどくらいしかトレーダー同士で議論することはなかった。
今は、1人でも何か感じると「Listen(耳傾けて」と叫び、感じたことを端的に共有する。
時には、共感した同士が、それぞれの売り買い逆のポジション交換することも頻繁にある。
責任は、投資家のお金を預かり、効率の成功報酬を契約しているので、低度な理解での失敗は許されない。
冷静に考えてみてほしい。私たちのファンドには、1兆円を超える資金が預けられている。
そして、投資委託したい先が待機している状態でもある。
だからこそ、失敗した時の説明要求は半端ではない。
投資銀行時代は、邦銀経由で日系企業からの委託玉やこちらのポジショントークを受け入れて邦銀からの注文もあり、利益は積み重ねる土台があった。
それもあり、(それ以上の時も以下の時もあったが)年間所得は約2-3億円は平均で稼げることができた。
日中は、邦銀や生保の市場為替部門の担当者からしきりなく雑談を申し込まれ、優良顧客でもあり、対応せざる得ないが社交的な時間を持つこともあった。
そして、時折、日本メディアの相手もすることもあった。
当然表層的なことしか語らないが、相手は “外資系トレーダーより”と書きたいし、日本語で話せるので、積極的にアプローチしてくる。
しかし、現場経験がないので、話が噛み合うことはなかった。
会社の宣伝の為に対応したというところ。
現在は、他社・メディアとの対話は、“禁止”。
そんな時間があるなら、社内で話す。
とても効率性高く有意義な時間の使い方をしている。
そして、年間所得は、投資銀行時代の数倍になった。
それだけに、同僚全員の真剣さ、学びへの貪欲さ そして 情報収集への努力は全く別次元である。
人によるが、私は、この空間と時間を愛している。
質問:それ程まで人材能力が違うのでしょうか?
回答:投資銀行時代には無かったことがある。当ファンドは、心理学者と精神学者と契約している。
彼らと週1度ビデオ会議を行い、自身の状況を診断してもらっている。
どんな人間でも1週間もあれば、微妙な変化がある。それを掴んでもらい、軌道修正してもらっている。
これは非常に有益な社内投資である。
投資銀行時代は、高学歴、体力がある、そして、数学力が少し高いだけで入社してトレーダーになる者が多い。入社後、飛躍的に成長するためには、自己努力となる。
しかし、そもそも、基礎学力があり、身体能力が高ければ、あとは、柔軟な思考と判断力の向上が得られれば、プロ中のプロのスタート地点には立てる筈である。
日系金融の人材も当初は同じようなレベルだと思う。
東大卒は必要ない。私も第二グループの私大卒である。
入社後の経験・体験で差が出てくるだけである。
最後は、ゴールをどこに置くかである。
いい例えかどうかわからないが、プロゴルファーで考えてもらいたい。
日本で賞金ランキング10に入れば、年間1億〜2億円の生活ができてしまい、それで満足する。
だから世界で通用する日本人ゴルファーが少ない。
1億〜2億円なら、米国の1大会で優勝すれば、簡単に得られる金額であり、世界TOP10なら、年間20億どころか30~40億円以上の所得が得られる。
つまり、高い目標と努力が継続できるかどうかで、トレーダーの成長は決まる。
質問:ドル円取引していて何か他の通貨と異なることがありますか?
回答:日本の邦銀担当者とか記者は、円主体でいつも考えるので、相場変動が大きくなると負け、的外れな考察になってしまう。
世界でも類を見ない個人投資家市場(FX)の存在もある。
日本のFX市場の動きは、我々も把握することは難しい。
高いレベルの個人投資家もいることは事実だ。
しかし、投資金額・分析体制では、我々は負けてはならない。
プロに運用委託されいるプロだからである
つまり、日本円主体で考えている金融プロが多いのが、弱点でもあり、私たちには好都合な面も否めないということである。
質問:短期的にどの相場に注目していますか?
回答:(笑)それは言えないでしょう。でも、世界一の市場である米ドル・ユーロの動きが中心となるのは間違いない。
FRBもECBも6月に政策決定会議がある。
その予想を軸に戦略を立てることは、プロなら誰でもする。
この数週間は、アジアの新興国通貨に投資しておく。
質問:日本メディアへの賛否両論ありますか?
回答:シンガポールにいても誌面でも電子版でも日本のメディアは読める。
しかし、新聞記事は、朝から読むことはない。
日本メディアの金融情報は、周回遅れが多い。
経済雑誌は、全く読む気もしない。
いつも、ブルームバーグとロイター。
そして、社内のエコノミスト・ストラテジストのメールを読む。
何が違うかというと、記者もコメンテイターもトレーダー経験がない人あるいは、大手ファンドと直接話していない人が書いているので、ロジックが無いというか、「全ては市場が決める」ということを理解してない。
どの分野でも現場経験のある人の話が最も信憑性高いので、そもそも情報伝達の価値を再考し無いと誰も読まなくなると思う。
学歴よりも職歴が大切である。
旧知の関係から、かなり赤裸々な話をしてくれた。
数ヶ月後に、再びヒアリングを確約してくれ、
その頃に、
ドル円相場をプロ中のプロは
どのように見つめているのか楽しみである。
次回は、国際金融のプロ(ストラテジスト・エコノミスト)との直接ヒアリングを共有する。