このシリーズは、読者の皆さんが徐々に韓国をより深く理解することを目指しています。
セレンは、情報を簡潔に、現地からの視点で、そして、読者が何かを得るためにゆっくりと伝えていきます。
以前、コロナ渦後、半導体業界を中心に多くの日本企業が、韓国を訪れていることはお話ししました。
一方、私のソウル・オフィスへ、韓国の現状をヒアリングするための、アポイントメントが頻繁に入ってきています。
しかし、依然、韓国人の思考を理解できていない日本人が多いことに、私自身が困惑を感じています。
つまり、ビジネスでも、日本人の視点と理解だけで韓国とのビジネスを進めようとする姿勢は、進化の必要があります。
韓国企業とのビジネスを進めるための方法については、以前に入門レベルの説明をしました。
しかし、私は、日本人の方へ韓国人の理解を、もう少し詳しく説明する必要があると感じています。
韓国とビジネスをする場合、または韓国について人前で語る場合は、もう少し理解を深めるべきです。
そうでないと、恥ずかしいだけでなく、欧米以上にビジネスライクな韓国人と対抗することはできません。
今回は、「韓国人が北朝鮮をどのように見ているのか」について、意外と知られていない事実を説明します。
韓国人の視点を理解することで、韓国とのビジネスや交流をより円滑に進めることができる筈です。
日韓の国民意識には、ズレがある
日本人が北朝鮮に対して「親和感」や「共感」を失った日を覚えていますか。
それは2022年9月17日、平壌での日朝首脳会談で北朝鮮が数十名の日本人を拉致した事実を認めた時です。
この時から、日本人の北朝鮮への感情は共感から違和感へと変わりました。
しかし、韓国人はどうでしょうか。
韓国人にとって、北朝鮮が他国民を拉致することは当たり前の事実と理解されていました。
逆に、「拉致した事実を認めた」ことを評価していました。
過半数とは言えないかもしれませんが、韓国の国民の中には、日本が北朝鮮よりも恐ろしいと感じる人もいます。
それは、日本の特攻隊とイスラム過激派が同一視されているからです。
米国で同時多発テロが起きた際、ブッシュ大統領が「アメリカ本土が攻撃されたのは、真珠湾以来のことだ」と発言したことが、親米国である韓国で特攻隊と過激派を同一視する理解をより広めてしまいました。
日本人は、特攻隊が一般市民を巻き込むような攻撃をしない倫理を持っていたことを理解していますが、
その倫理は、韓国や世界全体にはまだ浸透していません。
金日成親子の写真と肖像画
現在50歳以上の韓国人にとって、大多数は、金日成親子を絵でしか認識しておらず、彼らは常に凶暴な悪魔として描かれたものしか観て育っていませんでした。
日本に来て、金日成親子の写真や肖像画を初めて見るほど、北朝鮮の情報は韓国内には開示されていませんでした。
私の妻も同様で、金日成親子の写真を日本で初めて観て、温和さすら感じていました。
韓国では、少し前まで、北朝鮮は世界で最も厳しい恐怖政治を行っている国だと教育されていました。
しかし、段階的にその理解は変化しました。
韓国人の北朝鮮に対する意識の変化
盧泰愚(ノテウ)政権時代(1988-1992)にソウル五輪(1988)が開催され、北朝鮮の情報が韓国内にも徐々に配信され始めました。
その後、情報の流れは次第に進んでいきました。
金泳三(キム・ヨンサム)政権(1993-1997)になると、北朝鮮の情報が少しずつ公開されるようになり、韓国国民の中にも同じ民族の血が流れる同胞という意識が芽生え始めました。
金大中(キム・デジュン)政権下(1998-2003)では、北朝鮮に対する「好印象な情報」が大量に流され、2000年には金大中がノーベル平和賞を受賞しました。
2024年時点で韓国人唯一のノーベル賞受賞です。
この受賞により、韓国の北朝鮮に対する印象は大きく変わりました。
韓国で金正日は「金正日国防委員長」と呼ばれ、「韓半島共和国プラン」が現実的になりました。
しかし、2001年、南北首脳会談直前に金大中政権が北朝鮮に5億ドルもの資金を秘密裏に提供していた疑惑が浮上。
これにより、金大中への信頼は大きく傷つきましが、韓国の世論が「反北」に転換することはありませんでした。
「北朝鮮は怖い国」から「怖くない国」という認識が定着していたからです。
2002年には特筆すべき話があります。
それは日韓共同開催のサッカーワールドカップ後のアジア大会での出来事です。
韓国と北朝鮮は「コレア」と書かれた同じプラカードを掲げて入場し、北朝鮮の「美人応援団」が注目を浴びました。
結果的には、ファンクラブまで作られ、南北統一に何も障害がないとメディアが言い続ける状況でした。
そのアジア大会閉会式から翌日に、日本人拉致被害者の帰国の様子が韓国のテレビと新聞で報道されましたが、多くの人がそれについて言及することはありませんでした。
それは特に大騒ぎすることではないという反応でした。
この韓国人の感情と意識を日本人はしっかり理解する必要があります。
次回は、韓国人が持つ「統一性」という感情と意識についてお伝えします。