金価格は過去最高値を更新しています。

これは地政学リスク、特に可能性が高まる第三次中東戦争が原因でしょうか。

 

最近のFT誌によると、

☞主に中国の大量買いが3月以降の金価格上昇を引き起こしている。

☞西欧の投機筋の影響力は大幅に減少。

☞中国の商社、中財期貨(Zhongcai Futures)は、SHFEの金先物で金現物50トン分の購入を積み上げており、その価値は$4B㌦(約6200億円)に相当。

これは中国の中央銀行の金保有残高の2%を超えるもの。

 

中国は世界一の金産出国です(クリック)

しかし、中国は他国からも大量に金を購入しています。

つまり、国内では大量の金を採掘しながら、他国の金も積極的に購入しています。

 

金の産出量が豊富であるにもかかわらず、なぜ国外からも購入する必要があるのでしょうか。

 

私の米系投資銀行時代の同僚で、現在上海の大学教授を務める米系中国人に、この疑問について尋ねてみました。

中国人による金買いは、複数の要因が絡み合っている

中国は金消費国

中国では古くから金は富と繁栄の象徴とされ、ギフトや結婚式のプレゼントとして金製品がよく使われます。

このような文化的価値観は、中国人が金を購入する動機づけの一部となっています。

 

プレミアムが付いた「パンダ金貨」などのコレクションアイテムに対する需要も高く、パンダ金貨は, 中国造幣公司が発行している地金型金貨です。

国内で採掘される金の量だけでは、国内の需要を満たすことはできません。

 

実際、世界全体で産出される金の約60%は中国とインドが輸入していると言われています。

 

さらに深掘りすると、偽物が多い中国では、金の信用力は非常に大きい。

 

中国製の金製品には独自の刻印が施されています。

具体的な刻印としては、「足金」があります。

 

足金は中国語で「純金」を意味し、中国製の貴金属品やジュエリーには多くの場合、足金の文字が記されています。

刻印の表記方法は定まっていませんが、金の含有量に応じて万足金や千足金に分けられています。

 

概ねの基準としては、万足金=純金、千足金=21.6金~23金、足金=20金。

基本的に、万足金は文字通りの純金と認識されています。(純度の目安)

刻印の存在が、中国製の金製品に対する信頼度は担保されており、安心して売買が行われます。

 

政府主導の、国外からの金購入

人民銀の発表によると、金地金の総保有量は2023年8月時点で2137トンに達しています。

この時期に活発化していた人民銀の金買い入れは、2022年11月から始まりました。

国主導で金を買い増す期間は2023年7月末日で9カ月に及び、その期間中に約188トンの金が追加されています。

一連の金購入で、中国における金の外貨準備高は、2023年7月末日時点で3兆2040億ドルに増えました。

抗米目的です。

 

2023年半ば頃の金相場を見る限り、中国国内では、金の価格が高騰しています。

金は物価上昇や通貨価値の低下などの経済的不安から資産を保護する手段として見られています。

 

中国では、為替相場での人民元の下落や中国で続く不動産危機が予想されています。

人民元は米ドル相場で6%近い安値になり、国内の不動産市場は混迷状態を抜け出せていません。

 

このような状況下で、金は安定した価値を持つ貴重な投資商品となっています。

中国国内で人民元の下落傾向が変わらず債券の利回りなどが低下すれば、金の需要が増大して相場価格は高騰するとも予想されています。

 

政治色のない通貨「金」

金の需要が中国をはじめ多くの国で増えています。

その理由は、先行きの経済情勢の不透明さです。

ウクライナ、パレスチナ地区、中東エリアなどでの国際的な対立が深まり、戦火が鎮まらない状態が続いています。

通貨危機も、不安定な世界情勢の中で懸念されている事態の一つです。

 

欧米と対立している陣営は、将来的に欧米側の経済制裁により米ドルの資産運用が難しくなると危惧しています。

 

このような状況の中、ロシアや中国では米ドルの代わりに金が選ばれています。

ロシアは経済制裁を受けても資金を確保するため、中国は人民元の安定と米ドルからの脱却を目指して金の保有を進めていると考えられています。

(外貨準備として金の購入・保有量増)

 

また、個人レベルでは、中国共産党が国民資産移動を制限する可能性に対する懸念から、中国の人々は自身の資金逃避先を模索しています。

このような理由から、金への需要は高まる傾向にあります。

【中国の若者は「金」を買い、日本の若者は「株」を買う】

このような日中の投資ブームが現在進行中です。

どこの国へ逃げても正当価格で

売買できる金を選択する中国の若者は、

賢い選択をしているかもしれませんね。