現在でも、北朝鮮は中国やロシアとの距離を縮めつつ、日本に向けて何度もミサイル試射を続けており、日本の安全を脅かしている。
金日成の孫である金正恩将軍の真意は、同じ民族である韓国人でさえ理解していない状況である。
北朝鮮による緊張感は、韓国だけでなく日本も例外ではない。厄介な存在である。
権さんの話を続けていこう。
北朝鮮の厄介さが、より一層理解できるはずである
「北朝鮮は世襲制できちんと統治されているの?」
☞金日成、「生きた神様」として絶対化され神格化された国です。
彼の死後も世襲が続きました。金正日が3年間、継ぐことを宣言せず、静かに過ごしたのを覚えていますか?
私は貿易統計の仕事だったので、金日成の逝去前から経済破綻があったことは数字で理解しています。
金正日は父親より劣るということを認めさせてはいけなかったため、時間を稼ぎました。
そして、反分子を処刑することで国を統治しました。国民は、それに反対する考えを持つことはありませんでした。
我々は「将軍=神の使い」と教えられ、愛国に反するものは無用と考えられていました。私もそう信じていました。
金正恩が最高指導者になってからも、兄弟や叔父を抹殺することは、自らが愛国心を示す行為だと疑いもなく受け入れられました。
しかし、食糧難と不公平な食糧配給が続き、私は亡命する決意をしました。
ただ、生き残りたかっただけです。
「食糧難はどれほどなの?」
☞非常に深刻です。配給制度は崩壊しています。
特権階級だけが十分な食糧を受け取れる状況で、普通の階級でも食糧が不足しています。
主食は雑草を混ぜたとうもろこしの粥で、それさえ手に入らない人もいます。
街中には浮浪者が溢れ、死体が転がっています。
餓死といえるでしょう。
腐ったゴミを食べる人もいます。
妊婦も食糧不足に苦しんでいます。その結果、早産児が増えています。
「医療はどうなのですか?」
☞医療薬品や器具はほとんどなく、麻酔なしの手術が日常的に行われています。
労働力を期待できない人たちは放置され、食べ物がないため、麻酔なしの中絶手術が頻繁に行われています。
「食糧や医薬品不足は何が原因なのですか?」
☞北朝鮮では、韓国と米国が食糧事情を悪化させ、世界に嘘を広めて北朝鮮との貿易を阻害していると教えられています。
時々輸入される食糧や医療薬品は、将軍が自ら他国を説得し、友好国との同盟を通じて入手したと報道されています。
直接の原因は、外交及び産業政策にあると思われます。
「外貨不足も聞きます」
☞私が貿易統計担当だったので、外貨不足は理解しています。
しかし、全体像の数字を見せてもらうことはありませんでした。
先輩が一度、中国の担当者と酒を飲んでいる時に「昔は、国家全体で偽米ドル政策を行い、外交官に麻薬を運ばせて凌いでいた」と話したことがあります。
現在は、それもないため、相当な外貨不足は間違いないでしょう。
労働党の上層部の人々も痩せています。
「中国からの朝鮮族による貿易やビジネスは健在ですか?」
☞私が脱北する前は、彼らに頼ることが生きるために重要でした。
若い女性にとっては特に大変でした。
現在の状況は想像に過ぎませんが、彼らも厳しい経済状況であることを考えると、状況は難しいと思われます。
列車やバスでの略奪は頻繁に起きていると思います。
地方では、警察と組んでいる人もいます。
報告されなければ問題にならないし、階級社会なので、下位階級が何をされても問題視されません。
韓国に来て思ったのは、現実を知る筈なのに、韓国の北朝鮮報道は表層的であるということです。
逆に北朝鮮は、韓国政府が想像する以上に韓国の状況を把握しています。
明日最後になりますが、彼が脱北して韓国に来てからもう1年が過ぎました。
第二次朝鮮戦争の可能性、金正恩の考え、そして私が考えていることを伝えたいと思います。
思いがけないことを考えていました。
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