昨年秋に、私が経営するソウルのコンサルティング会社に、北朝鮮からの「脱北者」を試験的に受け入れた話をした。

 

「北朝鮮からの「脱北者」が同僚に」

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彼、(仮名)“権 Kwen”さんの採用期間が、無事昨年末に終了し、2024年1月1日より正社員として採用された。半年間でかなり、打ち解けた関係になってきた。

私が日本人であるためか、彼は私に深い話を始めた。南北の壁がないからであろう。

 

彼との出会い以後も、世界中で大きな紛争が続いている。

自己利益のために人がこれほどまでに残酷な行為をすることができると思うと、驚きだ。

 

日本は、先人たちのおかげで戦争に巻き込まれることなく、世界で最も平和で安全、そして豊かな国で生活できている。感謝する言葉しかない。

しかし、先日、米国大学院時代のドイツ人の友人(国連勤務)は、「緊急事態が続いており、アジアでの緊張感も高まっている」とZoomで話していた。

その可能性を否定することはできない。

 

独裁者を除き、戦争を望む人はいない。

とはいえ、韓国人の妻にプロポーズし、3人の子供を授かり、そして妻の両親とソウルで同居し始めてすでに21年になる私でも、朝鮮半島が依然として準戦時状態であることに不安を感じている。

朝鮮戦争は現在も国際法的には「休戦」状態であるからだ。

私の同僚、権さんとの半年間の対話を記録した。日本の報道では日常的に知ることのできない話を共有したい。

それにより、朝鮮半島の緊張感や北朝鮮の実態などを少しでも深く理解してもらい、日本が永遠にこの平和と安全を保証できるわけではない可能性を感じてもらいたい。

 

これは、隣国に住む日本人から同胞へのメッセージだ。

権さんの話は、聞けば聞くほど、驚くべき現実だった。

3回のエピソードで構成するが、ぜひ記憶に留めてほしい。

私の主観が入らないように「質疑応答」でお伝えする。

 

「権さんの記憶力と計算能力は驚異的ですね。欧米日など主要国の貿易収支係数を数年間記憶するなんて、さすがです。二桁の掛け算の暗算もインド人を凌ぎますね」

☞北朝鮮ではインドのカースト制度はありませんが、下層階級の人々が上層階級と結婚するのは難しい現実です。

出身が良くなければ、朝鮮労働党の党員にはなれません。

党員でなければ、就職は可能でも出世の見込みはありません。

軍隊に入れば食べるものが手に入りますが、命を賭ける仕事が増えます。

除隊後には食べるものすら配給されません。

つまり、過去や血筋は変えられないが、安定的な食糧を得るためには、一般的な人よりも10倍の能力が求められます。

 

「韓国に来れば多くの北朝鮮人が活躍できるかもしれませんね?」

☞それは難しいです。北朝鮮での技能はほとんど使えません。

韓国は現代技術の発展が驚くほど進んでいます。

ただし、暗号解読技術は北朝鮮の方が進んでいるかもしれません。

 

「韓国に入国した時は大変でしたか?」

☞脱北後、記者会見を強制されました。これは、日本でいう踏み絵のようなものです。

韓国人が私の顔を認知すれば、無用な話をしないでくれというメッセージであり、私が突然死すれば北朝鮮から韓国にスパイが存在しているというメッセージになります。

当初はソウル市内の隔離施設に収容されました。反共教育の生きた教材となるからです。

半年間、上遇されました。韓国が私を人として扱ってくれるとは想像もできませんでした。

しかし、私から調査するだけ調査され、その後は冷遇されました。

その経験から、あなたの会社に来た当初も自分の価値は北朝鮮の情報収集であると捉え、寡黙になるしかありませんでした。

 

「北朝鮮の”食糧危機”に関する情報が断片的に伝わってきているものの、外からは全く見えない。北朝鮮に暮らしている人以外は何が起きているのか、誰にも正確な事は分からない。しかし、最近は情報が少しずつ漏れてきているので、大変な事は分かりますが、実際はどうなの?」

☞ゴミすら食糧となります。

 

「それはどういうことですか?」

次回、権さんが語る私の想像を超える事実をお伝えする。

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