豪雨や洪水、落雷、噴火といった自然災害は、生命と生活を脅かす現象として長年恐れられてきた。
これについては科学技術が発達した現代でもなお不確かなものが多く、いかに予知が難しいかがわかる。
しかし、動物たちは、地震を予知し異常行動をとりリスク回避ができるようである。
「ナマズが暴れると地震が起こる」「深海魚が打ち上げられる」「イルカやクジラの集団座礁」「ネズミが街からいなくなる」「犬が遠吠えする」「猫が外へ出ようとする」など数々ある。
2004年12月26日にインドネシア西部スマトラ島北西沖のインド洋で発生したマグニチュード9.0の「スマトラ島沖地震」時には、象が仲間に超ヘルツ(超音波)で危機をしらせ、集団で山に駆け上り被害を免れた実話も記憶に新しい。
国土周辺に4つの大きなプレートがある日本、「投資」という5目のプレートによる「楽天地震」をどう予知できるのか。この災害は、「予知可能な人災」だ。
少しでも動物の予知能力に近づけるため、国際金融に30年以上勤めた私の防災対策の話を聞いてもらいたい。
予めお伝えするが、投資や商品を推奨するものではなく、あくまでも、新聞記者では伝えられない専門家の投資上の意見として読んでもらい。
日本の新聞や経済雑誌で書かれたことはない話である。
【楽天グループ 3000億円規模のドル建て社債 新たに発行へ】
こんな報道がいきなり飛び込んできた。
次々と報道がされることは、相当楽天Gが危機的状況であることは間違いない。
個人投資家は、それ相当の緊張感を持って楽天Gを見つめ直す最後の機会かもしれない。
この起債が実現しなければ、楽天Gはみずほ銀行による「解体ショー」に向かうと見られている。
この債券の利率は年9.75%、今年2月に約11.25%の利率で約2700億円分発行したドル建て社債に続く高利率の発行。
一部の専門家は、「楽天Gの信用リスクが落ち着いたことを示している」とこの起債について語っているが、私が問い合わせた欧米ハイ・イールドファンドの運用者は異口同音に、「調達コストが高く、損益的には悪化し短期で売り抜けるだけの投資対象」と判断していた。
では、プロがどのようにこの外債を見ているであろうか。
- この外債を長期保有はしない。多くのFlipper(“フリッパー”)が最初は買うであろう。
フリッパーとは、瞬間的に転売目的で投資する人たちのことを指す。
この社債が、募集額を超えた(oversubscribe)となれば、瞬時に流通市場(Secondary Market)で売却して小銭稼ぎする行為である。
つまり、中長期の信用リスクを取る投資家は少なく、「ババ抜き」ゲームになりそうな展開と読んでいる。
- 日本の個人投資家向けのファンドに組み込みやすい利回りを上げる債券となるであろう。
そもそも欧米の投資家、特に個人投資家が楽天Gのことなど知る余地もない。
私も数年前、日本でも有名な三井不動産が米ドル債を発行した際、「三井不動産って誰?」と尋ねられた経験を私は持っている。
結局は、欧米市場で中長期に楽天Gのリスクをとる投資家は少なく、日本の個人投資家が最終リスクテイクを担うことになるであろう。
つまり、大部分の欧米のプロ投資家は、
- 楽天はみずほ銀行の支援により「生き延びている」ので、短期での経営破綻リスクはない。但し、来年初はわからない。
- しかし、高コストでの資金調達が続けられており、経営破綻リスクは高まっている。
- 結論として、目先は高い利回りを享受して投資利回りを上げる投資対象とするが、1年も2年も債券を保有して、このようなハイリスクを取り続けることはない。
この債券発行が成功しなければ、瞬時に株の「空売り」をすることになるであろう。
と考えているようである。
そもそも、3000億円の外債発行額は、エマージングマーケットの国による発行額より多く、国際連合(IMFなど)による救済処置も期待できない1民間事業会社にしては、異常な発行金額である。
楽天Gは発表資料で、前回のドル債発行後、多数の投資家から「より年限の長い次回債についての要望を受けた」ことなどを踏まえて発行条件を決めたと説明しているが、眉唾物と私は見ている。
広報担当者は今後の資金調達について、ドル債のほか、個人投資家向け(リテール)社債を含め、あらゆる選択肢を排除しないと話している。
グローバル格付け機関では、BB(非投資適格)であるが、国内格付けは、ネガティブがついているものの、依然BBB(投資適格)。
「この場に及んで、純粋無垢な個人投資家を更に巻き込むのか」と怒りも覚えるのは、私だけではないであろう。
私論であるが、防災対策を述べてみよう。
(既存円建て楽天債所有の個人投資家へ)
さっさと取引証券会社に損切りをし、今回の外債とリスク交換をすることをお勧めする。
どんな価格で購入してくれ、定期的に提示されている時価評価とどれほど乖離するのであろうかは見ものである。
基本、ドル円の円安基調に変化はなく、9.75%の利回りの債権であれば、数ヶ月で損出しした円債の損失を外国為替利益で取り戻せる可能性はある。
損したままで終われないという感情論ではなく、私は、短期での経営破綻リスクは低いと捉えている。
もし、楽天Gの短期信用リスクが取れるのであれば、低い利回りの既存債券を塩漬けにするくらいなら、高い利回りと円安に賭けて短期で投資することも考えて欲しい。
(新規債券投資を検討する投資家へ)
若干投機的になるが、募集動向を眺めながら、短期転売を検討も投資妙味はあるかと思料している。満期保有などという自爆テロ的な判断は無謀であることは申し添えたい。
つまり、楽天Gの落日基調に投資したければ、フリッパー(超短期売買者)になることを薦める。
楽天Gの「金の斧」である金融子会社再編まであと6ヶ月以上ある。
私は、募集動向を見ながら、「フリッパー」という投資手法を個人投資家が学ぶことを願っている。