楽天グループが金融子会社の再編を、計画しているようである。

目的は、グループの財務を改善し、携帯電話事業の成長を加速するとされている。

長年国際金融に携わってきた私からすると、笑止千万。

楽天Gが落日への舵を切ったことを言えないだけである。

 

楽天Gの携帯電話事業はプラチナバンドを取得し、より一層撤退しづらくなっているとしか思えない。

当初は、途中で携帯電話事業をauに売却すると想像していたが、三木谷会長は、執拗なまでに携帯事業継続に固執している。

意地なのか、妄想なのか最早誰にも分からない。

 

彼は、自分のビジョンを追求し続けている。ソフトバンクの孫会長を模倣し続け、追い越すものだったのであろうか。

それとも、自身が情報時代の覇者になりたいのだろうか。

明確なビジョンは見えてこない。

 

私はプロとして、楽天Gという方舟が船体破損状態と判断している。

これからの展開を予想してみよう。

楽天関係者は気分が悪くなるかもしれない。許してもらいたい。

 

しかし、この予想は、現実になるであろう。

金融子会社再編について:

☞楽天ホールディングスの上場を止め、楽天銀行の上場を維持し、その傘下に金融子会社を統合するというプラン。

バルクセールで、高く早期に優良子会社を売りやすくすることを選んだだけのこと。

☞最終的には、メインバンクであるみずほ銀行と同行をメインバンクとしているイオングループが吸収し、経営破綻までは食い止めるであろう。

☞米国であれば、早期に処理をする。しかし、日本には合理的とは言えない日本の商慣習があるようである。

これは、外国人投資家には理解不能であろう。

 

楽天モバイル:

☞楽天モバイルは2023年10月、総務省から「プラチナバンド」と呼ばれる携帯電話の周波数帯域700MHzの割り当てを受けた。

これは楽天モバイルがNTTドコモ、au、ソフトバンクと競争していくために重要な意味がある。

☞楽天モバイルが発表したプラチナバンドの拡大計画は、「1万局の基地局を500億円で10年かけて開設する」という計画。

☞しかし、携帯事業各社のトップは異口同音に「500億円は少なすぎるし10年は遅すぎる」「より高い鉄塔を建てるなど追加投資が必要だ」と計画の不確定さの声を上げ、冷笑している。

☞これに対して、三木谷会長は、「自社独自の仮想化技術を使えば十分可能だ」と反論。

☞欧米の投資家の反応を見ると、「楽天シンフォニーという子会社が世界各国で楽天Gの技術を展示会やEXPOで披露しているものの、投資評価に値するものはなく、誰も投資を考えていない」というのが現状である。

事実、楽天シンフォニーの社長も途中で退任しており、見切りをつけられたようである。

☞メインバンクが楽天Gと同じみずほ銀行であり、国内第3位の広告代理店にまで成長したサイバーエージェントが吸収する可能性を報道されているが、今後の携帯電話市場の成長性と投資金額から見ると、サイバーエージェントでは荷が重すぎる。

☞この携帯事業については、最後はauに売却することになるであろう。

 

楽天イーグルス:

☞グループの財政が悪化する中で、三木谷氏のスポーツ部門への情熱は明らかに薄れている。ない袖は振れないからである。

☞近鉄バッファローズが球界撤退という特例で、無料購入した球団。実は黒字になったことはほとんどない。

実際、2017年度以外で営業黒字となった3回のうち、改修前で償却負担が発生しなかった設立初年度を除くと、日本一になって、クライマックスシリーズと日本シリーズで合計8試合のホーム開催による収入の上乗せがあった2013年度、そして田中将大投手の米大リーグ移籍に伴うポスティングフィー21億円が入った2014年度と、いずれもトップラインを引き上げる特殊要因があった年しかないのである。

☞進化した宮城スタジアムを建設し、稼働率は実質94%まで伸ばしているが、東北という土地柄、高額な入場料への上昇は無理だと言わざるを得ない。

☞松井選手もMLBへ放出し、田中投手から得られたポスティングフィーのような高額な収入は、現在在籍する選手には期待できない。

球団価値は、下がり続けている。

☞サイバーエージェント、パナソニック、イオンなどが経済誌やネットで買収先として挙がっており、すでに、球団売却の打診は行われていると想像してもよい。

時間をかけて世論をチェックしていく手法である。

☞メインバンクのみずほ銀行としては、滅多に出ないプロ野球「売り物件」として説得を続けていると思われる。

 

☞サイバーエージェントが毎年20億近い損失をカバーするビジネスモデルは受け入れ難いと思われる。

それだけでなく、広告代理店業界の衰退から、また数年後に売却となる可能性も否定出来ず、NPBコミッショナーや他球団は容認し難いのが現状であろう。

 

☞パナソニックは、すでに知名度が高く、今更コストセンターとなる投資をする意義は高くない。

そもそも、大阪発祥のメーカーであることから、東北で球団を所有する価値は無い。

スタジアム含めた技術提供社として結論づけている筈である。

 

☞イオンは、北海道のドラッグストアを買収・統合していくなど、全国展開に積極的。まだまだ宣伝費をかける余裕と意欲はある。

おそらく、イオンに買収に対し、みずほ銀行が懇請しているであろう。

ただ、イオンが球団買収だけでなく、みずほ銀行による楽天G資産売却への優先権を強く求めているのは間違いないであろう。

既にイオンは銀行とクレジット会社を所有していることから、楽天証券は魅力的である。

みずほ銀行との交渉次第では、みずほ証券から、楽天証券株を買い取る可能性もある。

そして、イオンは、楽天銀行とイオン銀行との合併も望むと思われる。

イオンは、買収によるスケールメリット享受が大好きな企業であることは言うまでもない。

 

現在、楽天Gの中枢にいる友人に、社内の様子を聞いてみた。

☞組織は船体が破損した船から遅れずに乗客と積荷を降ろしているような状態だ。優秀な若手は静かに退職していき、そのレベル以下の社員を補充するのが精一杯。

☞金融子会社だけでなく、すべての会社の組織統廃合も進めている。スリム化して筋力アップを目指すと通達しているものの、その理解を持つ社員は居るわけがない。

☞我々上層部は、面倒な仕事と業務が押し付けられないように防御することが仕事となっているのかもしれない

どうやら、社員の士気もかなり下降しているようである。

 

超資産家である三木谷氏が、多くの投資家から強い支援を得られない一つの理由を話そう。

規模は天と地ほど差があるが、サムスン・グループの1997年の話が良例である。

アジア危機時、韓国の財閥全てが存続危機に直面した。

その時、多くの財閥が破綻し、株価は暴落、多くの中小企業が倒産、厳しいリストラが行われ、一家の長の自殺や失業者・ホームレスの増大が見られた。

 

サムスン・グループも例外ではなかった。

サムスン・グループでは、グループ企業が59社から45社に削減され、中核従業員が16万7000人から11万3000人へと、なんと5万4000人、32%がリストラされた(従業員数に関する数字は文献によって若干違いがありますが、大幅な解雇が行われたことは間違いはない)。

その時、サムスンの会長は自身の私財を全てグループに投入した。

この金は、リストラされた従業員への支払い、残った従業員の安定保護、そして、勝算の高いビジネスへの挑戦を迅速に進める為に使われた。

楽天Gの株価も最高値から1/3にまで下がり、三木谷氏の持ち株も大幅に減少した。

しかし、三木谷氏の個人資産運用会社が積極的に資産を売却している様子は聞こえてこない。

こんな事も、支援企業が多く名乗りを上げない理由なのかもしれない。

 

いつか楽天Gの携帯電話事業が高収益ビジネスになるかもしれない。

しかし、この1-2年で実現すると断言できる専門家は居ない。

しかし、三木谷会長は続ける姿勢を崩さない。

時間が許されるのであろうか。残された時間はない。

最早、三木谷会長に意見を言えるのは、みずほ銀行しか居ないのであろう。

債務不履行に怯え社債保有し続けている個人投資家は、みずほ銀行に、こんなことを言ってもらいたいであろう。

「貴方は、孫正義さんでもありません」

まして、「ビルゲイツでも、スティーブンジョブスでも、イーロンマスクでもありません」

「衝立と同じ原理で、軽率に未経験の事業を広げればいつか倒れます」

 

私の旧知の中の米系不良債権ファンドマネージャーから、楽天Gに対する質問が増えてきた。

騒がしくなっていくようである。

(了)