最近、私の勤務先の国立病院では、サプリメントや健康食品、機能性表示食品の服用被害が疑われる患者さんや、一般医師と患者さんとの浅はかな合意による処方で搬送される重篤患者が増えてきています。

医師としてだけでなく、研究者としても、企業からの寄付は大きな支援者であり、多くの大学の医学部関係者も同様です。

そのため、企業への配慮もあって、「サプリメント・健康食品/機能性表示食品」についての殆どの医師が私見を公の場で話すことは避けています。

一方、サプリメント、健康食品、機能性表示食品の服用による被害が増えてきています。

 

今回問題となっている小林製薬の「紅麹」成分含有健康食品の被害は、患者さんが自身の命と健康を守る基礎理解を再認識する良い機会と捉えています。

これらの商品は、健康を維持する手段として広く受け入れられていますが、適切な使用方法や理解がなければ、それらは健康への脅威に変わります。

今回、「サプリメント・健康食品/機能性表示食品」だけでなく、「一般医師から処方される医薬品」にもリスクがあることを伝えたいと思います。

同時に、「患者さん」が持つべく基本的な理解を伝えたいと思います。それは、医師の言うことを盲信して従うことではなく、未熟な自己判断で健康を害するリスクを冒さないようにということです。

難しいことは言いません。ほとんどの患者さんは理解しているだろうけれど、忘れがちな論理です。

そうすることで、自身の命と健康への自己防衛が可能になります。それが私の願いです。

「サプリメント・健康食品/機能性表示食品」について

☞サプリメント・健康食品/機能性表示食品は医薬品ではありません。

☞効能には個人差があるため、保険適用がされず、食品として扱われています。

“健康食品=全員が健康”ではないということです。

☞最近、ネットで販売される多くの商品に、○○医師監修などと書かれていますが、綿密な研究と検証が行われているわけではありません。

そして、何か人体に問題が生じた場合、その医師が責任を取ることはありません。

☞多くの患者さんが体感から購入しているケースが見られます。その効能があるかどうかは、体感ではなく、適切な病院での医師による健康診断によって判断すべきです。

☞私自身、患者さんにこれらの商品を推奨したことは一度もありません。

☞「痩せる」「便通が良くなる」などを自己努力なしに、自身の健康に被害がないと信じられる根拠はありません。だからこそ、それらは医薬品ではないのです。

☞テレビ、SNS、雑誌などで広告を見るということは、企業が莫大な広告費を出しても十分な収益が得られる商品であるということです。

☞多くの製造業者が高級車に乗って私のところに来ます。それほど、サプリメント・健康食品/機能性表示食品市場は儲かるビジネスなのです。

 

一般医師から処方される医薬品のリスク

☞今年2月に日本でも糖尿病患者向けの新薬ウゴービが承認されました。

この薬は世界中で保険料を下げることに大きく寄与する「痩せ薬」として話題になっています。

☞私の病院の循環器系の医師にも、食生活を見直す努力をせずに簡単に「痩せたい」という理由で、この新薬の処方を依頼する患者さんが急増しています。

☞全ての薬には副作用があります。強い薬ほど強い副作用がある可能性も高いです。

☞それだけではありません。そのような薬は糖尿病専門医の指導のもとで検討されるべきで、一般医師が処方すべき薬ではありません。

☞先日、同じ薬ではないものの、渋谷の美容形成の医師から処方を受けた患者さんが、動脈血栓症を発症し、私の病院に救急搬送されました。肥満よりも深刻な病状になったことは言うまでもありません。

☞誰が処方し、誰がバックアップするか、新薬の適用についてはその辺を考慮して行うべきです。

 

これで理解してもらえたでしょうか。

 

日本における医師数は少ないとはいえ、様々な目的で医師をしている人もいます。

医師が専門的に話すと、患者さんは理解できずに医師の言いなりになってしまいます。

しかし、患者さんとしても、医者に完璧を求めてはいけません。

 

「サプリメント・健康食品/機能性表示食品」や「痩せる薬」は、簡単に踏み込む世界ではないと私は申し上げたい。

地道に健康維持に努めることを心から願います。