日本では、韓国の大統領が退任後に逮捕されるのは「任期5年で再選がないからやりたい放題になる」ことが理由だという表層的な理解が一般的なようだ。

私は韓国企業側のコンサルタントとして、日本企業との面談・宴席に参加することが多い。

この話題になると、いつでも横で見ていてハラハラする。

残念ながら、その程度の知識では韓国のトップ企業と渡り合えるわけがない。

私自身も、20年以上前に韓国に移住した頃、そのような発言をして韓国企業のオーナーから「勉強して出直せ」と厳しく注意された経験がある。

韓国側は日本のビジネス慣習(Protocol)に精通している。韓国企業との交渉で成功するには、大統領制度を含めて、文化の違いを理解することが先決である。

 

韓国は大統領制を選んだ国である。

第二次世界大戦の日本の敗戦で朝鮮半島の支配者が不在となった後、韓国はアメリカに、北朝鮮はソ連にそれぞれ管理された。1948年、韓国と北朝鮮が建国された。

建国当初から韓国は大統領制を採用している。

これにはアメリカの意向もあるが、それが定着した背景には、「国を統治するには、絶対的な支配者が君臨していなければならない」という韓国の歴史的文化がある。

それは、518年にもわたる李朝時代に形成された伝統である。

朝鮮民族には、強力なリーダーシップを待望する文化があるのだ。

 

これは朝鮮半島のもう1つの国、北朝鮮にも共通している。

北朝鮮も言うまでもなく、絶対的な権力を持った統治者によって治められている。

北朝鮮の方が、李朝時代の文化をより正統に引き継いでいるとも言える。

朝鮮半島がなお準戦時状態であることも、韓国でリーダーシップが重視される理由になっている。

朝鮮戦争は現在も国際法的には「休戦」状態である。

いつ戦争になってもおかしくないという緊張感から、韓国人は強いリーダーシップを持つトップを求めている。

有事に的確に状況判断をし、統率できる人でなければ韓国のトップには就けない。

それには選挙で国民がリーダーを直接選ぶ大統領制が適しているのだ。

韓国では男尊女卑がまだ強く残るが、日本に先んじて女性大統領が誕生していることを思い起こしていただきたい。

 

それでは、なぜ韓国の大統領は退任後に逮捕されるのだろう

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