前回は、日本の地政学的な重要性が高まっていることを指摘しました。
この背景には、日本側の経済安全保障戦略と、米国の対中政策の転換がうまく合致したことがあります。
日本の経済安全保障政策の出発点となったのは、自民党が2020年12月に発表した提言「『経済安全保障戦略策定』に向けて」です(https://www.jimin.jp/news/policy/201021.html)。
その基本な考え方は、「戦略的自律性」(他国への依存度を減らす)と「戦略的不可欠性」(日本の存在が国際社会にとって不可欠な分野を拡大する)、の2つです。
これに基づき、2022年5月には「経済安全保障推進法」が成立しました。
簡単に言うと、(1)主要産業(半導体など)を国内に戻して中国への依存度を減らし、(2) 米国および中国以外のアジア諸国(特にインド、東南アジア)との経済的な結びつきを深める、という戦略です。
岸田首相は4月に訪米し、米議会で演説する予定です。今年1月の施政方針演説で、岸田首相は以下のように表明しました。
四月前半に予定している国賓待遇での訪米などの機会を通じ、我が国外交の基軸である日米関係を更に拡大・深化させます。日米同盟を一層強化して我が国の安全保障を万全なものとし、地域の平和と安定に貢献します。
また様々なチャネルを通じ、サプライチェーン強靱化や半導体に関する協力など、経済安全保障分野における日米間の連携を強化します。
訪米の目的として、「日米同盟」の強化だけでなく、「経済安全保障分野における日米間の連携」の強化が前面に出されています。
これは中国経済をサプライチェーンから排除しようとしている米国にとって、歓迎すべき動きです。つまり、米国経済が中国に依存していた部分を、今後は日本が取って代わるということです。