日本では大麻は嗜好品でなく、繊維を作るために古くから栽培されてきた。大切な農作物であったため、『古事記』、『日本書紀』、『万葉集』にも大麻が登場する。正倉院には、大麻を使った「麻紙」の文書も残存している。
歴史的にも現実的にも、大麻は日本の生活に深く入り込んでいる。日本の食卓の定番調味料である「七味唐辛子」には麻の実が使われている。
笑い話になるが、以前に私が香港の大学の研究所に勤めていたとき、日系スーパーから「七味唐辛子」が突然消えた。分析の結果、危険薬物ではない種類と製造方法であると判明し、販売が再開されたことがある。
神社のしめ縄や大相撲の横綱の綱は、大麻から作られている。ただし、産業用大麻の栽培も大麻取締法で規制されており、10月9日付の読売新聞の記事によれば、代表的な産地の栃木県でも以前は6000人近かった生産農家が12人に減っているようだ。
高さ2メートル以上の柵と監視カメラの設置が義務付けられ、県境を越えての供給が認められないなどの厳しい規制もあって、後継者が見つからなくなっている。