現在、世界経済を見る上で最大の不透明要因は中国経済です。不動産会社の経営難が次々と判明し、人民元は2007年12月以来の元安となっています。一部では、「失われた30年」に入る前の日本と同様な状況だという見方もあります(関連記事:Vol. 195 中国経済の三重苦(過去・現在・将来)。中国経済はどのくらい深刻なのでしょうか?
専門家は色々な意見を語っています。ただ、私が30年近く金融市場に関わってきた経験から正直に言うと、「中国経済はわからない」と割り切った方がいいと思います。
もちろん、中国でもアメリカや日本のような経済指標を一揃い発表しています。今週金曜には、鉱工業生産、小売売上高、失業率、固定資産投資など8月の経済指標が公表されます。しかし、実際には、そのようなデータをいくら分析しても、的確に予測することはできないのです。
なぜか。
中国のように多様で変化の激しい経済を一つの数字で表すのはそもそも無理なのです。中国のGDP統計の信頼性は以前から疑問視されており、色々な推計値が発表されています。しかし、外部から入手できる限られた情報に基づく推計値が、公式統計よりも正しい保証はありません。
そもそも、①都市部と農村部、②民間企業と国有企業、③市場経済と社会主義、が共存するのが中国です。それをどのようなバランスで一つに集計するのが正しいのかということに、正解はありません。