【これは、健康な時期に考えておくべき問題であり、相続について考える前の課題かもしれません。】

尊厳死、安楽死、リビング・ウィル、そして終末期医療について、これまで10回にわたってお話ししてまいりました。

長い間、私の言葉に耳を傾けてくださり、心から感謝申し上げます。

 

また、多くの方々から頂いた貴重なご意見には、深い感謝と感激の念を抱いております。

 

この連載が、皆さまに「時には立ち止まって、大切なことを考える」きっかけを与えることができたなら、それほど嬉しいことはありません。

 

しかし、これが私の最後の文章となります。

私自身の余命も限られており、ここで筆を置かせていただくことをお許しください。

 

今後は、私が信頼する友人であり医師である方に、この大切なテーマについてバトンを渡します。

彼は私以上に豊富な海外医療の経験を持ち、より冷静かつ深い洞察をもって皆さまに問題提起をしてくれることでしょう。

 

さて、今回のテーマは「終末期医療とホスピス」です。

 

平成23年当時、日本では在宅での終末期医療やホスピスという医療施設自体が非常に不足していました。

自宅で最期を迎えた人は全体のわずか8%、ホスピスで死を迎えた人も同じく8%に過ぎませんでした。

高齢化社会の進行に伴い、終末期医療を提供するホスピスの整備が急務であり、多くの患者は一般の病院で最期を迎えていたのが現状でした。

 

しかし、時は流れ、2022年の厚生労働省のデータによると、自宅で死を迎えた人の割合は約15.7%に増加しました。

一方、ホスピスや緩和ケア病棟で最期を迎えた人の割合は約1.9%と、むしろ減少しています。

 

 

この変化の背景には、在宅医療の普及やサポート体制の充実、家族の希望、そしてホスピスの利用制限や費用・アクセスの問題が挙げられます。

自宅で最期を迎える人が増えている一方で、ホスピスでのケアが難しくなっている現状が浮き彫りになっています。

 

これは、日本の医療福祉が改善していることを示す一方で、「安らかな最期」という視点ではどうでしょうか。

 

ある日、大阪大学人間科学部の柏木教授が、150人ほどの看護師に以下の質問をしました。

「あなたが不治の病にかかり、今勤務している病院で死を迎えたいと思いますか?」

 

手を挙げた看護師は一人もいませんでした。

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